地方の経済、今年いっぱい持つか

2022年09月04日

 1日(木)は菊陽町に進出する台湾の世界的半導体企業「TSMC」に備えた街づくりに関する講演会で、将来に向けた夢のある話と意見が出ました。しかし3日(土)は阿蘇郡高森町で開かれた「南阿蘇畜産共進会」、そのあと熊本市での熊本県商工会議所連合会と県選出国会議員団の意見交換会で、厳しい声を聴かされました。

 TSMCが進出する菊陽町は人口も伸び、様々な可能性が考えられる地域です。一方、阿蘇地方や中小企業が中心の商工会議所には何とも言えない閉塞感が漂っています。
 畜産のコストアップは容赦なく家族経営の農家を直撃しています。牛を十数頭前後飼育して子供を産ませ10か月ほど育ててセリにかけ売買する繁殖農家は、飼料が高騰した時に政府から支払われる一定のセフティーネットの「配合飼料価格安定基金」には入会していないところが多く、飼料高騰の波を直接受けています。小規模だけに安定基金への加入金の負担が大きいからです。
 組合長からは「このままではやめざるを得ない。これだけ飼料が高騰するとは誰も思っていなかった。今年中に繁殖農家は減少する。何とかして欲しい」と訴えられました。

 その後の商工会議所でさえも「これだけコストがアップすれば小規模事業者は持たない。コロナの次に来た燃油や資材の高騰は地方にとって大変な危機である」という各会議所からの意見が数多く出ました。
 私も観光面での現状を黒川温泉や菊池温泉等の友人に聞いてみましたら、黒川温泉などの人気のある温泉地では客足は戻っているという事でしたが、そうでない所は、まだまだという事でした。

 つまり都市部や大企業、ブランド力を持つ商品や企業、地域はかなり復活してきたものの、小規模事業所や中山間地の経営や産業はさらに厳しい状態に追い込まれ、地方は格差が拡大しているというのが実態のようです。

 私たちは今、虎の子の予備費をいかに効果的に投入するか、臨時国会でどの程度の補正予算を編成するのか、そして来年度の予算編成に向け動いていますが、現場はそれ以上のスピードで厳しい状況が続いているという事が、地元へ帰れば感じることが出来ます。

 これを機に企業や地域の淘汰が進むことが考えられます。生産性の向上に向けた企業努力や地域の経済改善には全力で取り組まなくてはなりませんが、一方でかつてないスピードで地方、小規模事業者の疲弊が起きていることも事実です。

 今年も残り4カ月。私たちも手をこまねいていれば大変な事態になります。コスト高に加え円安が今以上に進めば更なる打撃となります。経済の構造的改善、改革を伴うところの支援策を早急に打つことが求められます。

 補正予算に向けての動きは今、ほとんど聞こえて来ません。年末に向け経済混乱が起きないようにしなくてはなりません。
 事態は深刻という事をもう少し共有すべき、と考えます。