LGBTについて

2023年02月08日

「LGBT」に関する発言で総理秘書官が更迭されました。予算委員会でも性的マイノリティーの方々に関する質問が出ています。

大臣当時の予算委員会
私が一億総活躍担当大臣の時、2021年5月、予算委員会で橋本岳委員から質問がありました。
「どのような性的指向を持つ方であっても、どのような性自認を持つ方であっても憲法14条の法の下の平等、あるいは差別されないという対象にあるのだ、含まれているのだと(私は)考えているが政府見解をお尋ねしたい」というものでした。

その時私は一億総活躍担当大臣として次のように答えました。
「委員ご指摘の通り、憲法14条の趣旨に照らしましても、性的指向、性自認を理由といたします不当な差別や偏見はあってはならない、というふうに認識しています。政府と致しましては、このような認識の下、多様性が尊重され、そしてお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとして人生を享受できる共生社会の実現に向けてしっかりと取り組んで参ります」

それにこたえて橋本委員は次のように結んでおられます。
「差別というのは、正当な差別というのはないのでありまして、差別、偏見は許されない。このことについては性的指向、性自認の問題につきましても当然に当たるんだ、この前提を基に私たちとしてもしっかり協議をし、どのような案になるかこれからですけれども、国会として結論が出していけるよう努力してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします」

議員立法を巡り与野党協議

ちょうどこのころ、LGBTいわゆるセクシャルマイノリティーについて議員立法として与野党の法案協議が行われていた時でした。自民党は「LGBT理解増進法」を案として提示し、まずは国民の皆さんと理解を深めていこう、という趣旨の法案内容でした。
対する野党は「LGBT差別解消法」で差別をなくすための法案でした。

この時、一億総活躍担当大臣・孤独・孤立対策担当大臣でもありましたので、もし法案が成立すれば、担当は私になると想定し、様々な準備をしていました。

担当大臣になるのでは?】

そのため、私も付け焼刃ですが何冊かのLGBTに関する書物を読み、考え方を整理していました。読んだ本の中で最も説得力があったのは当時早稲田大学文学学術院の森山至貴(もりやまのりたか)准教授が書かれた「LGBTを読み解く」ークィア・スタディーズ入門(ちくま書房、ちくま新書)でした。

冒頭の文章は、セクシャルマイノリティーを見下す心が見え隠れする人が良く使う枕詞は「私はセクシャルマイノリティーに対する偏見を持っていませんが・・・」という言葉を使う人は「偏見ではない」と前置きしながら、(LGBTに)文句は言いたいが自分が善人であることは手放したくない、という本音が透けて見える、と記されていました。多くの方々はこのレベルである、と私自身の反省も含めて衝撃を受けました。

セクシャルマイノリティーを傷つけたくないと心から考えている人は、大事なことは自分が傷つける意図がないことではなく相手が傷つかない事だと直感的に分かっている人は他者を傷つけることに敏感になる、とも書かれています。

他者を傷つけないためにはLGBTについて知識としてしっかりと知っておくことである、と書かれており、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)などの世界の歴史や日本の同性愛史などが学術的、客観的に書き込まれていました。古今東西においてセクシャルマイノリティーの方々は常に一定の数おられ、その存在は当然のことであるにもかかわらず、厳しい批判にも晒されてきた歴史がある事、など改めて読ませていただきました。

理解増進か差別解消か】

当時の与野党協議は不調に終わります。「差別」という文言を入れた原案が示され、自民党では最終的な了承にいたりませんでした。「差別」が入るかどうかでそれほどもめるのか、という意見もありますが、現実的にはなかなか難しいところもあります。
先日の自民党総務会である総務の方が「先日ゴルフ場の方が言っておられたが、性自認が女性の方が女性のトイレに入ろうとされた。それを止めたが、もしそのことが差別と言われ、告訴されたら法的に処罰されることになる。だから慎重にしてもらいたい、という声があった」と発言されました。

現実の社会で起こり得る問題にどう対処していくか、「理解を増進させる法案か」「差別を解消する法案か」。難しいところですが私はまず理解を求めることからスタートすべきでは、そのためには先ほどの本などをみんなが読み込んで、国としても啓発活動を行い、十分に理解し、いろいろな施設での必要な設備設置の準備期間なども置いた上で始めなければ、いきなり差別解消を声高に叫ぶなら、混乱と対立が深まる、と考えます。

写真は森山至貴先生の著書