若手酪農家の懸命の取り組み

2022年07月06日

 5日(火)、菊池市にある若い酪農家でつくっている飼料工場「アドバンス」に話を聴きに行きました。
 同工場は「TМR」(total mixed ration)と言って、「混合飼料」「完全飼料」と呼ばれ、栄養を考えながら乾燥牧草やトウモロコシなどの濃厚飼料を混ぜ合わせて牛の餌をつくる工場です。酪農家が集まってつくり上げるので、国もこれまで、将来の酪農の在り方の一つとして推奨し支援して来ました。

 平成19年、菊池市旭志地区にスタートした「アドバンス」はモデル的な工場として、かつて小泉進次郎自民党農林部会長の時に自民党としても視察しました。
 飼料が高騰している時、国がこれまで将来の酪農の在り方として推奨して来たTМRが窮地に陥っていれば酪農全体が大変なことになる、という思いで話を聴きに行きました。

 「アドバンス」は旭志地区の酪農家20戸でスタートしましたが、現在は22戸に増えています。3戸の酪農家が酪農をやめ、新たに5戸の酪農家が参入して来たそうです。
 コントラクターというトウモロコシ生産の組織をつくり、320haでトウモロコシを生産しています。TМRは生産したトウモロコシ50%、オカラやしょう油粕などエコフィード25%、残りは輸入した配合飼料や乾燥牧草を混ぜ合わせて飼料を作っています。年間の製造は2万1000tで、乳用牛1500頭分と育成中の乳用牛の管理への飼料250頭分という事でした。

 従業員は9人です。いずれも20代から50代までが中心で皆さん真剣でした。完成した飼料は22戸の酪農家に注文量に応じて届けられますが、各酪農家ではそのまま食べさせるところもあれば、乳量を増やすために新たな餌を追加する酪農家もあるそうです。

 「アドバンス」の運営は色々な不安を抱えながらもみんな懸命に頑張っていました。しかし、輸入飼料の高騰はそうとう経営を圧迫しており、生乳の生産だけでは赤字で、乳牛に和牛を生ませて販売することで何とか息をついているという状態でした。しかしここ3か月ほど和牛子牛の安値が続き経営は大変な様でした。

 「何を一番今望むのか」と聞いたところ、乳価の引き上げという事でした。やはり酪農は生乳での勝負が本筋ですので、これほどコストが上がってくれば乳価の引き上げしか道はありません。しかし、メーカー側は乳製品の在庫が溜まっているため、もし牛乳を値上げして需要が落ちたときに乳製品にして在庫に回す余裕がないとして、乳価交渉は難航しています。

 難しい局面です。国として何が出来るか。選挙が終わってもう一度農林水産省と話し合わなければなりませんが、多額の予算は必要になります。
 酪農はほかの畜種に比べて、施設費用が膨大にかかります。IT化した畜舎にロボット搾乳機、糞尿処理のための施設、トウモロコシなどを播種したり刈り取るための機器(ハーベスター)など3億から5億円の投資になります。

 しかし、我が国の牛乳はその品質についても一級品です。中国などはまだまだ技術的に遅れています。今後はアジアへの展開も含めて、飼料の自給率を高めるとともにアジアへの輸出戦略も含め、酪農王国としてゆるぎない地位を確保するための政策を実行していかなくてはなりません。

 特に、北海道を除く都府県酪農では熊本が生産量も多く他県をリードしていく必要があります。

 食料政策の中でも重要産業政策です。