持続化給付金の委託問題について

2020年06月12日

 補正予算の目玉政策の一つである「持続化給付金」の委託問題を巡って国会で論戦が続いています。持続化給付金は、感染症拡大により事業者が前年よりひと月でも50%以上の減収であれば、最大200万円を給付するというものです。事業費は第1次、第2次合わせて4兆2600億円にも及ぶ巨額予算です。中小企業向けの目玉政策です。

 申請社数は数百万社です。それを審査して給付します。申請受付も給付作業も並大抵のものではありません。国も民間の大手に委託しなければ作業は不可能です。受託した民間企業も下請けに回さなくては処理できません。今それが、下請けに出すたびに中抜きされていた、税金の無駄遣いだ、と野党は主張を展開し、メディアも連日報道しています。

 この種のものは金額が大きいだけに、いろいろな疑いの目をもって見られがちです。そして虚実織り交ぜた情報が乱れ飛びます。だからこそどれが真実でどれが単なるうわさで、どれがつくられた話なのかをしっかり選り分ける作業が必要ですが、今は全てが大きな巨悪が存在していたがごとく言われています。危険なことです。

 私も以前、ある自治体の市長と業者の癒着からくる汚職を取材したことがありますが、それこそ様々な情報が寄せられました。反市長派からすれば市長とそのグループを追い落とす絶好の機会ですので、様々な事を捏造してでも新聞社に伝えます。それを鵜呑みにして報道したらアウトです。薄い皮を一枚一枚はがしていくような地道な取材をして、そのうえで確信が持たれる事実だけを書く、という作業をしていかなくてはなりません。

 しかし、現在の委託問題は虚実、創作、連想、捏造が一緒になって国会の質問の場に登場します。それをメディアがそのまま報道する。いつの間にか全てが疑惑の中にあるような印象を与えることになっています。

 法に違反する犯罪的なことがあれば、これは許されません。しかし、かつてない膨大な給付作業に取り掛かるに当たって様々な不慣れな点も出てきます。拙い部分もあります。中小企業が倒産の危機にもある時、この制度を振り出しに戻すがごとくすべてを否定するやり方には賛成できません。