フランス国家と地方自治

2013年07月02日

 フランスでの地方分権大臣との会談、地方自治体の首長や議員との話し合いから昨日帰って来ました。忙しい丸2日間でしたが完璧に当初の目的を果たせました。
 地方分権担当大臣は女性で、県議会議員も経験しているベテランです。フランスの最大の課題は失業率の引き下げと景気回復ですが地方分権も大きな課題のようです。
 フランスは市長や国会議員、県議会議員を兼務することが出来ます。それは国会議員が地方のことをよく知りそれを国政に反映させる、というメリットがある反面、これだけ複雑な世の中になって、それぞれの公職が全うできるのか、という課題もあるようです。国会で兼職禁止の法案を出しているようですが、伝統に裏付けられた肩書きを手放せるのか、法案成立はなかなか難しいようです。
 地方都市はイシー市というパリ隣接の市の市長と会いました。千葉県の市川市と姉妹提携をしています。1980年に市長になったベテランで、フランス政界きっての親日家です。地の利を生かして企業誘致を積極的に進め豊かな地域に育てました。現在は情報通信都市にしようと懸命です。マイクロソフト社も進出していますし、韓国や中国の情報通信企業の誘致も進め、自信満々の市長でした。ちょうど来週に市川市を訪れるということで、市川市がどのような電子自治体を進めているか、またどのように青少年交流を深めていけるか、大変楽しみのようでした。
 パリ郊外のトゥール市は城郭がある落ち着いた風光明媚な13万人の都市です。四国の高松市と姉妹提携を結んで25周年を迎えます。18世紀から19世紀にかけて出来た、市庁舎や駅や街並みが見事です。その市街地に隣の市も含め来年13キロにわたりトラム(低床の路面電車)が走ります。開通までの追い込みに忙しそうでした。案内した専門家はこのトラムの開通で、いかに町や市民の生活が変わるか、一方で古き良き物をいかに、効果的に残すかを強調していました。フランス美的感覚は、線路の引き方やトラムのデザインにも大変なこだわりようでした。
 市の副市長もベテランの女性でしたが「古き良きものをいかに大切にして、新しいものにどのくらいの思いで挑戦するかが大切です」と言っておられました。印象的な言葉でした。来年秋に高松市で第4回日仏自治体交流国際会議が開催されます。皆さん一様に楽しみにしておられました。
 パリ中心も郊外も賑わっていましたが、それでも経済は厳しいということでした。夏のバーゲン序盤戦ながら、日曜日も例外的に開店するところがあちこちにあり、店先には40,50パーセント引きセールの張り紙がいたるところに見られました。これも、消費が伸び悩む中で、いつもより早い、思い切ったセールで少しでも在庫を減らそうという苦肉の策ということでした。どこも景気回復に汲々としているようです。
 やっぱり地方分権は世界のどの国でも必要です。しかし、自立性や地域経済の繁栄、地域文化の創造が可能な分権でなくては何にもなりません。一方で地方自治と国のバックアップ体制をどう効果的に進めていくかも、地域計画の実行という面ではカギを握ります。分権はこれらの手段であって、目的ではないということは訪れた自治体の市長と話しながら、改めて分かりました。フランスという国家の権限が比較的強い国では特にその印象を強く持ちました。
 今後、日本の地方分権も熟慮が必要です。