通常国会が終了、59法案のうち58法案が成立
2025年06月24日
1月24日に開会した今年の通常国会が150日間の日程を終え、6月22日に会期末を迎えました。このブログも令和7年度当初予算が成立した後に書いた4月1日以来のブログとなります。
会期中は与野党の駆け引きもあり、なかなかご報告できませんでしたが、やっと振り返っての感想を報告することが出来ます。
【政府提出法案59本のうち58本、議員立法は17本が成立】
与党自民党の国会対策委員長としての職責は政府などから提出された法案を衆議院と参議院で可決し、成立させる事です。特に政府提出の法案は、社会の変化に応じて新法をつくったり、改正していくもので、昨年から各省庁で考えられ、与党である自民党・公明党の各部会を経て入念に作成されたものです。しかし、一旦国会に提出されると、野党は野党としての意見を各党が述べて来ますので、すんなりと成立する法案もあれば、なかなか成立までたどり着くのが難しい法案もあります。特に今回は少数与党の状態で、野党が結束すれば、全ての法案は否決されることになりますので、それぞれの委員会で厳しい論戦が繰り広げられました。
成立した法案のうち12本は野党の意見を取り入れて修正の上、成立させたものとなりました。
【年金改正法案は立憲民主党と共同修正】
各法案の中で成立が最も困難だったのは「国民年金改正法案」です。年金は人口減少と高齢化で支える若者の人口が少なくなり、給付される高齢者が多くなることで年金財政そのものが厳しい運営を強いられています。年金は国民年金と厚生年金からなり、その財政は皆さんの拠出、企業の拠出、国の予算からの支出で成り立っています。厚生年金は企業が半分を支援するために安定的な運営をしていますが、国民年金は個人経営や第一次産業、更にアルバイトの若者などが多いために国からの支援、もしくは厚生年金の積立金の配分の見直しによる国民年金及び厚生年金の基礎年金部分の底上げがなくてはなかなか厳しい状況です。しかも1990年代にバブルが崩壊して以降は、就職も困難な時代で就職氷河期時代とも呼ばれ年金に加入していない方も数多くおられます。このため、これらの方々が年金を給付される時期になる2040年代以降になると、給付されない方々も現れ、老後の生活が保障されない、という事態を招きます。それに備えてどのような対応をするのかが今回の年金法改正のポイントでした。
最終的には立憲民主党と4年後の年金検証において今一度対応を協議し、5年後の年金改正時期にしっかりとした対策を考える、という事で落ち着き成立しました。
【与党は忠実に成立を願い、野党は各党の思惑も加わる】
今国会を通じて国会対策委員長として思うのは、与党である自民・公明は政府と一緒になって考えてきた法案ですので、ひたすらその成立に向けて動きますが、野党はそれぞれの思惑で動く、という事でした。野党各党にはそれぞれの支持団体がいます。その団体の意向を尊重しなければなりません。また最近はネットの社会です。SNSにおける国民の皆さまの反応を見ながら方針を決めていく、という場面も見られました。特に今年の7月には参議院選挙、その前に東京都議会議員選挙が予定されていましたので、世論の動向を重視し、なおさらその傾向が強かったようです。
6月11日に提出された「ガソリン暫定税率廃止法案」は、その施行日が7月1日、というもので、まさにその典型でした。「暫定」という名称にも関わらず25.1円の税金が掛けられているのはけしからん、直ぐにでも廃止すべきという、論法です。
しかしわずか20日間の間に成立させて、それを実行すればどれだけ社会が混乱するか計り知れません。ガソリンスタンドでの買い控えと7月になってからの集中的購入、ガソリンスタンドは暫定税率がかかったガソリンを既に購入し貯蔵していますが、それを25.1円引きの安い価格で販売しなければならない。その差損をどうするか、ということは新たな法律が必要ですがその準備はありません。そして約8000億円の国の税収減になりますが、その代替財源をどうするか、という事も明確ではありません。
そして何より自民・公明党は今年末の税制改正でガソリンの暫定税率は廃止すると約束している訳ですから、それまでの間で様々な事を考えて、廃止に備えるというのが常識的な考え方とは思うのですが、それがどうしても野党の皆さんには通用しませんでした。結果として多数野党の衆議院で可決し参議院に送られ、参議院では与党が多数ですので最終的には廃案になりました。
少数与党になるとこの様な理不尽なことも起きるという、一例でもあります。
【責任ある政治を】
最も感じたことはしっかりと将来を見据えて、強い決意をもって責任ある政策と政治をして持続的に実行していかなくてはならない、という事でした。野党の皆さんは消費税ゼロ、あるいは大幅な引き下げなどを主張されていましたが、果たして財源無しで政治が本当に持続していくのか、などを考えなくてはなりません。
私たちは国民の皆さまの生活を預かっています。子どもや若者に将来的な負担を与えずに、一方で高齢者の方々に医療、年金、介護などで安心してもらわなくてはならない、という政治的使命を持っています。その場しのぎの政策を展開する訳にはいきません。一時的に不評を買っても将来を考えて「良薬は口に苦し」の思いで責任を遂行していかなくてはなりません。
野党の皆さんもいつ政権を担う事になるか分からない訳ですので、「もし政権を運営することになったら」という事を十分に考え、国内外の現実を直視しながら議論を展開していかなければ、空論になってしまう、という歯がゆさを感じた国会でもありました。