営農型太陽光発電の現場を視察

2023年05月16日


 15日(月)、私が座長を務める「自民党営農型太陽光発電に関するPT」で茨城県つくば市と千葉県富里市の営農型太陽光発電施設の現場を視察しました。
営農型太陽光発電は、平成25年再生エネルギーへの転換が叫ばれていたころ、「農地に太陽光パネルを設置し、その下で農業をすることにより農業者の所得を引き上げる」という目的の下、農地に太陽光発電の設置を許可することとなりました。
 農地であるため、営農継続が条件です。このため太陽光パネルは3メートルほどの支柱を立て上部に設置し、その下で農業を行い、支柱の部分だけ農地を一時転用するという仕組みです。

当初の目的とは違う形態に
 制度の発足から10年が経過しましたが、全国から太陽光パネルの下で良質な農業は行われていないケースが多い、という指摘が相次ぎ自民党でも、営農型発電について制度改正するかどうかを検討するためのプロジェクトチームをつくる事になり私がその座長に就任した次第です。

 これまでに数回検討委員会を開き、この日が現場の視察になりました。朝7時50分に自民党本部に集合して衆参7人の議員で、営農型太陽光発電が多い茨城県つくば市と千葉県富里市の視察になったものです。

 現場を視察して、当初の目的である「農業者の所得を向上させる」という目的からはかなり隔たりがあることが分かりました。

 「発電事業者」「農業者」「農地の地権者」がそれぞれに違います。先ず発電事業者が太陽光が設置可能な農地を探し、その後で営農する人を探し、そして地権者には地代として発電事業者から支払われる、という構図になっています。

 太陽光パネルの下ですので日光が当たりません。そこで耕作されているのは榊(さかき)やミョウガ、牧草など日陰を好む「農作物」です。発電事業者の委託を受けて営農者が構成されますので、地元のプロの農家ではありません。真の農業経営体とは言えないものでした。しかし耕作放棄地に設置したとの説明を受け、農地を荒らしておくくらいなら、という考え方も出来ます。

自治体、農業委員会も困惑
 市役所では市長さんや農業委員会、行政の皆さんと意見交換をしましたが、やはり当初考えていたものとは違う形になっており困惑した意見が出ました。農地の一時転用の期間は3年間ですが、一旦農地転用の許可を出し、太陽光パネルと変電所が設置されてしますと莫大な投資をしているだけに簡単に更新時に不許可という訳にはいきません。悩ましい現状になっていることを改めて知りました。

今後の農政に大きな影響
 国は現在、ロシアによるウクライナ侵攻などで食料、飼料、肥料等が高騰し輸入が厳しくなっていることから食料安全保障の確立を急ぎ、「食料・農業・農村基本法」の見直し作業を進めており、自給率を高めることに主眼を置いています。しかし、一方で農業後継者は減少し、地域の担い手が極度に不足しているのが現実です。

 そこで「多様な担い手」をこれからの農業の地域計画の中に組み込む予定ですが、今回の視察で明らかになったような「発電ありき」の中で農業が行われ、必ずしも食料自給とは関係ない農作物が発電事業者からの受託で作物を栽培している現状は、必ずしも健全な農業とは言えません。

 しかし、これらを規制する事が出来るかというと、これもなかなか難しい作業になります。発電事業者からの訴訟が起きることも考えられます。

 これから私たちPTでは論点の整理に入りますが、将来を見通しながらどのような制度改正をしていくか、困難なPTの作業が続きます。今後の農政を考えた場合にも大きな問題です。

写真は営農型太陽光を視察するプロジェクトチームのメンバー