阿蘇の世界文化遺産へ向け再スタート
2022年02月14日
去る1月20 日、熊本県の蒲島知事と阿蘇郡市の市町村長さんたちが、阿蘇の世界文化遺産暫定リスト入りに向けて末松文部科学大臣に陳情した際に、大臣から「阿蘇全体での文化に対する活動をして、世界に誇れる文化地域としてしっかり守って戴きたい」という趣旨の厳しい指摘を受けました。その時、私はこれまで進めてきた熊本県の考え方と文化庁の方向性に少し開きがあるのでは、と危機感を覚えました。そのために県と文化庁の、文化遺産に対する考え方の平仄(ひょうそく)を合わせておかなくては、と14日(火)、議員会館の私の事務所に文化庁と熊本県双方に集まってもらい、今後の考え方についての意見交換をしました。
文化庁からは審議官と調査官が熊本県側からは直接の担当者である文化課長らがお越しになりました。文化庁からの考え方を聴き、お互いに意見交換する中で、改めて分かったことがありました。
それは、世界遺産と言えば以前は、エジプト・ピラミッドのように誰が見ても聴いても知っている世界的な文化遺産が多くあり、それらが指定を受けてきました。しかし近年では、一般的な知名度や観光的な価値というより、文化遺産としてどのようなコンセプトのもとに世界的な価値を見出すか、という方向に変化しているという事でした。
例えば、富士山は世界文化遺産に指定されましたが、私たちはだれが見てもあの美しさや日本を象徴する世界的知名度が指定の大きな要因だったと思いがちですが、そうではなく、富士山という象徴に対する以前からの山岳信仰、そして葛飾北斎が富嶽三十六景に描いたように歴史的に優れた景観として描かれて来ており、それが芸術創作の源泉にもなっているということで世界の中で文化遺産として指定されたという事でした。
それを阿蘇に当てはめるなら、阿蘇も当該地の文化遺産として世界に誇れるコンセプトをしっかりと作り上げなくてはならないという事です。既に熊本県もそれは十分に承知の上で、広大なカルデラの中で草原を活用しながら農業をはじめ産業が千年の歴史の中で息づく生きた遺産として、また活火山の活動や各地でこんこんと湧き出る湧水など自然環境のすばらしさ、というコンセプトをアピールして来ました。しかし、地域的にもう少し文化のコンセプトをつくり上げなくてはならない地域がある、という事もこの日明確になりました。
今後暫定リスト入りへの向け、新たな地域も含めたコンセプトづくりや阿蘇の住民の方々や市町村長さんと話し合い、守るべき文化をみんなで共有することの大切さなどを進めることになります。私からも「蒲島知事へも報告して、早期の暫定リスト入りを実現させてほしい」と熊本県にお願いしました。
阿蘇の世界文化遺産指定へ向け、まずは暫定リスト入りへの歩みに弾みがつけばこの日の意見交換会は有意義なものになります。