来年は変動の年

2008年12月31日

 いよいよ今日という日で平成20年が最後となりました。いつもより2時間遅い午前9時に阿蘇立野で辻立ちをした後、午後1時30分に買い物客で賑わう菊陽町の夢タウンで辻立ち納め、をしました。みなさん手を振ってくれましたし、友人の一人が孫さんを抱いて、帰ろうとしていた私を「坂本さーん」と呼び止めてくれました。みなさんと直に会って、今年最後の挨拶をするのは気持ちいいものです。
 今年は激動の年、来年は変動の年になりそうです。ノンフィクション作家・半藤一利さんが書かれた「幕末史」を読み始めました。黒船来航から西南戦争までの激動の時代を書いたものです。これまでのものと違うのは、これまでのこの種の多くの書物は「明治史観」もしくは「薩長史観」で書かれていました。いわゆる幕末の志士の活躍によって明治維新が成し遂げられ、近代国家日本への道を開いた、というものです。しかし半藤さんは明治や薩長がやったことを必ずしも善しとしません。どちらかというと江戸の目で書いたものです。
 私もかねがね、「明治は偉大な時代で近代国家として日本が歩み始めるためには、どうしても通らなければならなかった国家体制であるけれど果たして、庶民にとって良い国家であったかとなるとそれはノーではないか」と思っていました。今もそうです。「国家神道」「天皇絶対主義」「廃仏毀釈」「財閥と政治の癒着」「明治の元勲たちの豪華な暮らし」などは明らかに日本国家としては異常ですし庶民にとって良い国家像ではありません。日露戦争の勝利まではそれが許されたとしても、その後たどった日本の運命悲劇はこの明治の異常さの結末、と思っています。
 本来の日本の良さや、庶民の姿、日本らしい文化や社会の仕組みは江戸時代に見られるし、優れているものが数多くある、日本という国の原点は江戸時代である、といい続けてきました。それだけに今回の半藤さんの「幕末史」には興味を持っています。
 今の政治、「自民党」を江戸時代に、政権交代を「明治維新」に例える方が数多くいらっしゃいます。その一面はあります。人材が枯渇し、庶民の感覚が分からず、官僚政治にまかせ自らの政策と決断が出来ない「自民党」は江戸幕府の末期と一緒と言えるかもしれません。
 しかし、それに変わる政治のエネルギーを今の民主党には感じません。ガソリンの暫定税率の廃止や基礎年金の全額公費負担、子供手当ての新設、郵政の民営化廃止、そして消費税論議の棚上げ、などでこの日本を変えることが出来るのだろうか、と思います。しょせん旧田中派の権力闘争に敗れた旧自民党体質の権化 (ごんげ)のような方が党首となっておられる政党に果たしてこれからの日本の新しいスタイルを描く発想力があるのでしょうか。
 仮に政権交代があったとしても、江戸から明治になり、維新の功労者たちが豪勢な暮らしをして財閥をつくり、政官業一体となって、近代国家としての仲間入りだけに奔走した、その間庶民の生活が窮屈になり言論統制も激しく日本の本当の良さも消えていった、そんな時代の繰り返しになりはしないか、と感じます。
 15年前新党が出来て、自民党が下野して政権政党が交代しました。日本の政治が変わるかと思われました。しかし選挙制度が変わっただけで政治の本質は変わりませんでした。それは間違いを二つ犯したからです。
 ひとつは余りにも性急に日本新党やさきがけなどの「新党」が政権を取った事。もっと野党の時代をすごし地方にしっかりした組織をつくって堂々とした政党になって政権をとるべきでした。当時「さきがけ」であった私がそう思ったのですから間違いありません。ちなみに五つの政党を取りまとめて政権をしゃにむに取りにいったのは、今の民主党党首です。
 二つ目は自民党が野党の座にいたたまれず、政党としての反省もなしに当時の社会党と手を組んで政権を奪回したことです。悪い膿みを出す、人心を一新させる、ということが中途半端で終わりました。
 日本の政党政治にとって不幸なことでしたし、それだけの能力しかなかったのかもしれません。しかし、今度は過ちは繰り返せません自民党が勝っても、政権交代しても政党のあり方を日本の政治の姿やあり方と重ね合わせてじっくりと体質改善をしていくべきです。
 自民党は戦後これだけの日本をつくってきました。その方向性に間違いはありません。しかし、永い政権政党の生活の中で癒着や丸投げ、官僚依存などで自らの力や知恵を使わなくなってしまった部分があります。やはり何事も自分たちで苦労して時間はかかっても手作りの物をこしらえることが大切です。それをもう一度みんなで取り戻す努力をすることから始めなくてはいけません。
 その意味では来年は期待が持てる政治の年になる、とワクワクしています。もちろん自分が選挙に当選して、国政のその場に居る、ということが大前提となります。来年は選挙。そのような気持ちで「変動の年」に向かいます。よろしくお願いします。